司法書士って? 仕事内容や隣接士業との違い②

司法書士の8つの業務内容

①からの続きです。

次に、司法書士の具体的な業務内容を案件の多い順に並べると、以下のようになります。

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その①不動産の登記手続

その②相続問題、相続手続

その③企業法務や登記手続 

その④成年後見制度利用に関するアドバイスや具体的支援

その⑤債務整理に関する相談・解決

その⑥裁判所に提出する書類の作成及び訴訟代理人として依頼者の利益に応える

その⑦供託手続

その⑧筆界特定手続

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では、それぞれの業務内容を詳しく見ていきましょう。

その①「大切な財産を守る!不動産の権利を守るための登記手続を行う専門家」

 司法書士は、土地や建物など不動産の名義や権利に変更があったときに、皆さんの代わりに登記申請手続を行う仕事をしています。
 例えば、ご自宅の不動産の売買や子供や孫に贈与したときの名義変更、身内の方亡くなられ、不動産を相続したときの名義変更、協議・調停・審判・裁判離婚をして不動産を財産分与したときの名義変更、住所や氏名が変わったときの住所氏名の変更登記、銀行でローンを組んでお金を借りたときの抵当権設定登記、銀行のローンを返済したときの抵当権抹消登記などがあります。

 勿論、単に登記を代理して行うだけでなく、すべての関係者の権利が満足するように登記に必要な書類や取引の内容を確認し、責任をもって登記申請を行っています。

 このように、司法書士は不動産に関する登記申請手続を行う専門家であり、不動産取引の安全と、国民の大切な財産である不動産の権利を守る重要な役割を担っています。

その②「相続問題、相続手続のエキスパート!」

身内の方が亡くなられた際には、故人の大切な遺産についての相続問題を解決します。例えば、誰がどの財産を相続するのか、相続人の調査などに伴う戸籍の収集や相続関係説明図の作成,話し合いの結果をまとめた書面である遺産分割協議書の作成を行っています。また、財産よりも負債の方が多い場合などに遺産を一切相続しない相続放棄手続や、そもそも財産関係が不明である場合にする限定承認手続、相続人の中に未成年者がいる場合の特別代理人の選任申立手続、相続人の中に行方不明者がいる場合の不在者の財産管理人の選任申立手続、遺産相続で争いになってしまった場合の遺産分割調停の申立手続などに必要となる、家庭裁判所に提出する書類の作成を行っています。これらの手続は、相続登記手続に付随する業務として、司法書士が行っています。

その③「会社や法人法務の専門化!企業法務や登記手続は、お任せあれ」 

世の中には、多くの会社や法人がありますが、新しい会社や法人を起こすには、法務局に行って、設立登記が必須です。また、設立後、本店や事業目的、役員、出資額などに変更が生じた場合には、その旨の変更登記を行い、会社や法人と取引する相手方の信用を維持しなければなりません。
 そして、司法書士は、依頼の趣旨に応じて、手続に必要な株主総会議事録等、各種書類を作成、代理して登記申請手続を行います。勿論、それだけでなく、例えば会社の設立であれば、どのような種類の会社にするか、会社運営の基本ルールを定めた定款の内容をどうするか、どのようなスケジュールで手続を進めていくかについても助言を行います。
 また、企業法務や組織再編、事業承継などの分野においても、主に中小企業の経営者の方からの相談に応じています。

 このように、司法書士は、会社・法人登記の申請手続や企業法務の専門家であり、会社を巡る取引の安全を実現する制度を支える重要な仕事を行っています。

その④「成年後見制度利用に関するアドバイスや具体的支援」

 成年後見制度とは、認知症や精神障がいなどの理由で判断能力が不十分となり、自分で介護施設への入所契約や、預貯金の預入、解約、遺産分割協議などを行うことが難しくなる場合があります。このような場合に、本人の財産を保護し,本人を支援する支援者を選任するもので、大きく分けて次の二つの制度からなります。

1 法定後見制度
 様々な事情により、判断能力が不十分となり、自らの財産を自らの判断で管理処分することが困難な方々のために、①管理する人(後見人)や、②保佐する人(保佐人)、③補助する人(補助人)を選任し、本人の生活や財産管理等を支援する制度です。
 上記の各支援者は、家庭裁判所で選任してもらいます。選任された各支援者は、家庭裁判所等の監督のもとで本人の支援を行います。

2 任意後見制度
 上記の「法定後見制度」は、「既に判断能力に衰えが見られる方」に利用される制度であるため、自らが望む後見人や支援の内容を選べないことがあります。そこで、将来の自らの財産管理等に不安があるような場合、自らの判断能力が十分なうちに、予め将来の後見人候補者や支援の内容を決めておくことができる制度が任意後見制度です。
 司法書士は、上記各制度の支援を全般的に行っています。具体的には、上記各制度に関する相談から、家庭裁判所に提出する申立書類等の作成のほか、司法書士が後見人、保佐人、補助人となることも多くあります。このように、法律的な支援が必要な方や、今後必要となる不安のある方、こうした方々のご家族等の支援に努めています。

その⑤「力強い味方!債務整理に関する相談・解決」

 債務整理とは、例えば何社もの消費者金融やクレジット・カード会社から借金をしてその返済ができなくなった方を対象に、これらの会社との個別交渉や裁判所への法的な手続を通じて借金の返済の負担を軽減し、経済的に立ち直るのを手助けする業務です。

その具体的の業務としては、

(1)任意整理
 貸主と交渉し、余裕のある返済が可能となるように、裁判外で和解を行います。
(2)不当利得返還請求(過払い金返還請求)
 利息を多く払い過ぎていたときに、裁判手続及び裁判外の交渉を通じて、払いすぎた金額の返還請求を行います。返還を受けた金額を他の債務の返済に充てることにより、総債務額を圧縮することができます。
※ ただし、「司法書士が代理人として行う業務」は、法務大臣による簡裁訴訟代理関係業務の認定を受けた司法書士が、簡易裁判所において代理することが認められた範囲(訴額140万円以下)に限り行うことができます。

その⑥「裁判所に提出する書類の作成及び訴訟代理人として依頼者の利益に応える」

 司法書士は、裁判所(地方裁判所、簡易裁判所、家庭裁判所など)に提出する書類を作成することを業務としています。裁判所に提出する書類とは、民事訴訟をするために必要な訴状や準備書面、民事調停を利用するために必要な申立書など、民事紛争に関するもののほか、相続放棄や成年後見に関する申立書など、家庭内の問題に関するものも含まれます。支払督促や強制執行にかかわる書類も作成します。

 また、法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所において取り扱うことができる民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)等について、当事者の代理人となって業務を行うことができます(簡裁訴訟代理等関係業務)。
※簡裁訴訟代理等関係業務とは、簡易裁判所における民事訴訟手続、訴え提起前の和解(即決和解)手続、支払督促手続、民事調停手続、少額訴訟債権執行手続や裁判外の和解交渉手続などについて代理する業務をいいます。

 簡裁訴訟代理等関係業務は、業務を行うのに必要な能力を有すると法務大臣が認定した司法書士に限り、行うことができるとされています。

その他の業務として、

その⑦「供託手続」
 例えば、大家さんが家賃を値上げすると伝えてきて、自分は今までの家賃が適正な金額だと思う場合、大家さんに従来の金額の家賃を支払っても、受け取ってくれません。また、大家さんが亡くなって、その相続人が誰だか分からない場合など、家賃を支払いたくても支払えない状況もあります。このような場合、その家賃を法務局に預けることで、一応は支払ったかたちにすることができます。この制度を供託といいます。このようなケース以外にも、様々な種類の供託手続がありますが、司法書士は、この供託手続を、本人を代理して行うことができます。

その⑧「筆界特定手続」

 お隣の土地と自分の土地との境界線(筆界)が明らかでないとき、法務局に筆界特定の申請をすることによって、正しい筆界を迅速に特定することができます。法務大臣の認定を受けた司法書士は、対象土地の価格が5600万円以下の筆界特定の代理人として、手続を行うことができます(筆界特定制度は、あくまで筆界の位置を特定するもので、土地の所有権がどこまであるのかを特定するものではありません。)

その⑨「外国人帰化申請手続」
 日本で生まれ育った外国人や、日本に永住したいと希望する人が日本国籍を取得するためには、法務大臣の許可が必要です。司法書士にご相談いただければ、帰化の手続の流れについて、わかりやすく説明し、必要な書類集めや作成方法についてもアドバイスをいたします。

まとめ

このように、司法書士の仕事は、本当に多岐にわたります。

冒頭、申し上げた、「身近な法律問題を気軽に相談でき、解決してくれる法律専門家」であることが分かっていただけたでしょうか。

司法書士は、日々、トラブルにならないよう、大切な財産や権利を守り、また、アドバイスが必要な多くの市民のサポートをしているのです。

それでは!

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